動力用エンジンとして、現在広く使用されているのは 自動車、鉄道車輛牽引用、船舶などの内燃機関である。 最近、その内燃機関の排気ガスによる大気汚染が問題となり、有害ガスの排出量の少ないエンジンの研究が盛んになってきた。 内燃機関というのは、シリンダーの内部で燃料を燃焼させるものである。これに対して、シリンダー内ではなく外で燃焼させる”外燃機関”というのがある。もっともよく知られている外燃機関は、蒸気機関であろう。 その外燃機関の一つに、”スターリングエンジン”というのがある。このエンジンは、燃料は何でもよいこと、シリンダーの外で燃焼させるので、そのコントロールが容易であることなどの理由で最近各方面で注目されだしている。燃料は灯油、液化天然ガス、液体水素などはもちろんのこと、マキ、ワラ、燃えるゴミでもいいし、太陽熱でもいいのである。
スターリングエンジンの発明者は、スコットランドのロバート・スターリングという人で、1816年のことであった。現在、広く使用されている内燃機関は、1870年以降の発明であるから、スターリングエンジンは、それよりもずっと古いことになる。一時は、スターリングエンジンも、ポンプ駆動用として、あるいはそのほかにも使われたが、1920年以降、その姿を消してしまった。というのは、モーターの普及と、小型軽量の内燃機関に圧倒されてしまったのであった。 写真<準備中>は、アメリカ製のスターリングエンジンの模型であるが、加熱部をアルコールランプで熱するようになっている。ランプに火をつけて、1、2分後、ピストンを手で動かしてやると、往復運動をはじめ、クランクで回転運動に変えられ、車は回転しはじめる。 それは、1分間に1000回転程度の速さで動く。このシリンダーの中の気体は空気である。そして、加熱部と冷却部とは隣りあわせで、時が経つにしたがって冷却部も手を触れることのできないほどに熱くなるが、回転は依然として続く。空気の膨張収縮がこのように速く行なわれているのが不思議と思えるほどの回転が得られる。
シリンダーとピストンからできているこのスターリングエンジンの原理は、シリンダー内に封じこめられた気体を、外から熱し、膨張するときの圧力でピストンを押し動かし、つぎに冷却し、気体が収縮し圧力が減少し、ピストンを引きもどすという方法でピストンを動かすようになっている。
|