第三回
「みさとさん 名残の鍋パーティー」
日曜日の午後4時。みさとサンはダイアリーを開いて考え込んでいる。
友人達に新しい住まいのお披露目はしたけれど、そういえばこのところ、パーティーをサボッテいた。
仕事は相変わらずたてこんでいるだけで、それもいつものことだし。
それより、マミちゃんのお見合い問題はどうなっているのか。同期の仲間を招いて、さりげなくどんな様子か探ってみようか…
2週間後のお花見日和の日曜日。
三々五々、顔がそろっていった。
優しい色使いの花束を持ってきたのは裕子、麻布で買ったというバケットを抱えてきたミヤ、マミちゃんはスイーツの係り、傾向の違うチーズをチョイスしてきた那津子、お披露目の日にこれなかった久美は、ワインとDVD。
皆がそれなりの選択をしてきている。
この日、みさとサンが準備したメインは鳥ダンゴの鍋で、口に入れるとふっくらハフハフしていて美味しい。
オードブルがわりに京菜のサラダを用意してあるし、あとは様子をみてラザニアを焼こう。
ともかく乾杯しようね。
「ね、マミちゃん、例のお見合い話はどうなったの」
と那津子がダイレクトに聞き、
「断ったわよ、だって、顔が気に入らないんだもの」
とマミちゃんが頬を膨らませて答える。
裕子は優しい声で、
「あんな条件のいい人を振るなんて、さすが大物ね」
と、褒めているのかどうなのか。
唯一既婚者の久美は
「まぁ、なるようにしかならないから仕方ないんじゃない」
ミヤは
「もったいない」
と厳しい。
笑って食べて、一人が泣いたり携帯が鳴ったり、ちょっとしたすれ違いがあり、でも仲良しの私達。
みさとサンは静かに笑っている。
ケーキにたどりつく前に、というより、日が沈む前にベランダにでてみない。
みさとサンが誘う。
5階のベランダから富士山から続く山並みが見えるのが気に入って決めたのだ。
毎朝、ベッドを抜け出してリビングのカーテンを開け、外を見て深呼吸する時間が一番好きだし、ウィークエンドは、暮れなずむ西空を刻々と染めかえる山並容の色調を、眺めてあきることはない。