第五回
「靴があわないという気分の日」
なんでも嫌になる、誰にでもそういう時期ってあるに違いない。でも、どうして私が、こんな私らしくない気持ちになるのだろう。
じゃぁ、なにか嫌なことがあって、落ち込んでいるのか、というと、格別なこととも思えない。
原因はナンなの!と考えてみても思い当たらない。だから、みさとサンはうろたえているのだ。
ベッドから離れたくない。飲み物だけでいい。「おいしいもの」を積極的に食べたいという気分になれない。電話もかけないし、かかってきた電話にもでない。
ようやくベッドからでたけれど、がウンを着たままFMにラジオのスイッチを合わせ、ソファでボーッとしている。本も読まない。リビングにおいたテレビの大型フラット画面のスイッチを押そうとも思わない。
フルーツなら食べられそうだ。
みさとサンは冷蔵庫の扉を開けて、グレープフルーツといちごと、パパイヤを取り出した。
いつもなら、具合が悪くなければ、普通なら…こんな行儀の悪いことはしないのに。そう自分に言い訳をして、洗ったイチゴはステンレスのボールに入れ、パパイヤは半分に切ってお皿に載せてある。
キッチンのダイニングテーブルの前に座った。
グレープフルーツはそのまま薄皮をむいて、みかんのように食べる。パパイヤはスプーンですくって食べる。イチゴはそのまま手でつまんで口に放り込んだ。グレープフルーツ1個、パパイヤ1個、そしてイチゴ1箱を5分で食べ切った。
そうだ、アイスクリームも食べちゃおう。
一息ついたところで、みさとサンは思いついて、長く息を吸って時間をかけて吐く自己流の深呼吸をしてみた。
そうしたら、身体に微妙な変化がでてきて、そうか、久し振りに身体を伸ばしてみようと思いつく。身体の中心を意識し、土のエネルギーを足の裏から吸い上げて、大きく宙に放つ。
久し振りのエクササイズで、身体も心も軽く、ホットになってきて、ようやく、元気が出てきたようだ。
そう、さっきまでの私は、間違ったサイズの靴をはいていたのかもしれない。疲れるし、転んでも困るし、でも歩かなくちゃいけない、と思っていた。
心配なら立ち止まって深呼吸してもいいし、なるべく自分のペースを保てるのがベストなのだろう。